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骨・関節系疾患:BMP I型受容体の阻害は異所性骨形成を低下させる

Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1888

進行性骨化性繊維異形成症(FOP)は筋組織を主とする軟部組織において進行性の生後骨形成を示す先天性疾患であり、有効な治療方法は知られていない。罹患患者はACVR1遺伝子に保存された変異を有しており、この遺伝子がコードする骨形成タンパク質(BMP)I型受容体であるアクチビン受容体様キナーゼ2(ALK2)の構成的活性化がこの変異により引き起こされると考えられている。今回我々は、ALK2の207番目のアミノ酸のグルタミンからアスパラギン酸への置換によって得られる構成的活性型ALK2(caALK2)をコードする誘導型遺伝子をマウスの筋肉内で発現させると、異所性の軟骨内骨形成、関節の融合と機能障害が生じ、ヒトFOPの主要症状の表現型模写となることを示す。BMP I型受容体キナーゼの特異的阻害剤LDN-193189は、caALK2をアデノウイルスにより発現させた組織で、BMPのシグナル伝達因子であるSmad1、Smad5とSmad8の活性化を阻害し、異所性骨形成と機能障害を軽減する。Creを発現するアデノウイルス(Ad.Cre)によるcaALK2の誘導性発現とは対照的に、caALK2の全身的な生後発現だけでは異所性骨形成は起こらないが、コントロールのアデノウイルスによる感染と組み合わせると、異所性の骨形成が誘導された。コルチコステロイド治療は、Ad.Creを注射した変異体マウスで骨形成を阻害したことから、caALK2の発現と炎症性環境の両方がこのモデルでの異所性骨形成発生に必要であることが示唆される。以上の結果から、FOPの病態発現におけるALK2キナーゼ活性の調節不全の役割が裏付けられ、BMP I型受容体活性の低分子による阻害がFOPや過剰なBMPシグナル伝達を伴う異所性骨形成症候群の治療に有効である可能性が示唆される。

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