Article

腎疾患:ウロキナーゼ受容体による腎臓障壁の機能調節

Nature Medicine 14, 1 doi: 10.1038/nm1696

足突起消失と蛋白尿として表れる足細胞の機能不全は、進行性腎疾患の出発点となることが多い。この疾患の細胞レベルでの治療法は今のところ存在しない。本論文では、足細胞でウロキナーゼ受容体(uPAR)シグナル伝達を誘導すると、αvβ3インテグリンの脂質に依存した活性化などの機構を介して足突起消失および尿中へのタンパク質喪失が起こることを示す。uPAR(Plaur-/-)欠損マウスはリポ多糖(LPS)介在性の蛋白尿がみられないが、構成的に活性なβ3インテグリンが発現した後には疾患を発症する。遺伝子導入研究から、LPS介在性の蛋白尿発症には足細胞でのuPAR発現が前提条件だが、内皮細胞での発現は必要ないことが明らかになった。機構としては、uPARは足細胞でのαvβ3インテグリンの活性化に必要であり、細胞の運動性を高め、低分子量GTPaseであるCdc42とRac1の活性化を促進する。αvβ3インテグリンの働きを阻害すると、in vitroで足細胞の運動性が低下し、マウスでは蛋白尿が軽減する。今回の知見は、腎透過性の調節におけるuPARシグナル伝達の生理的役割を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度