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心臓弁膜症:コンドロモジュリン-Iは血管新生を妨げることにより心臓弁の機能を維持する

Nature Medicine 12, 10 doi: 10.1038/nm1476

心臓弁の無血管性は一部の心臓弁膜症(VHD)では失われる。今回、心臓弁が無血管性を維持するための分子機構、およびそのVHDとの相関について調べた。軟骨から単離された血管新生抑制因子コンドロモジュリン-Iは、心臓弁で多量に発現される。コンドロモジュリン-Iの遺伝子ターゲティングにより、老齢マウスの心臓弁でVegf-Aの発現、血管新生、脂肪沈着、石灰化が促進された。心臓超音波検査法により、大動脈弁の肥厚、石灰化、乱流が観察され、大動脈弁狭窄の初期変化の起こっていることが示された。心臓弁間質細胞の培養上清は、血管内皮細胞の管腔形成能および遊走能を強く阻害し、この細胞のアポトーシスを誘導した。これらの作用は、コンドロモジュリン-Iを標的とする低分子干渉RNAによって、ある程度抑制された。感染性心内膜炎、リウマチ性心臓弁膜症、アテローム性動脈硬化症などに起因するものなどのヒトのVHDでは、コンドロモジュリン-Iの発現が低下した領域でVEGF-Aの発現、新生血管の形成、石灰化が認められた。これらの知見は、コンドロモジュリン-IがVHDへ進行する可能性のある血管新生を抑制することにより、心臓弁の正常な機能の維持にきわめて重要な役割を果たしていることの証拠となる。

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