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PI3K:PI3Kγの遮断は慢性関節リウマチのマウスモデルで関節の炎症と損傷を抑える

Nature Medicine 11, 9 doi: 10.1038/nm1284

ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)は、癌や循環器疾患ばかりではなく、炎症や自己免疫疾患の治療にとっても有望な薬剤標的であると長い間考えられてきた。しかしPI3Kの阻害剤については、特異性の欠如、アイソフォーム選択性および生物薬剤学的プロファイルが劣ることが妨げとなり、今まで疾患ごとの標的が厳密に検証されていなかった。本論文では、PI3Kγ(Pik3cgにコードされる)の、特異的かつ選択的に働き、経口活性を有する低分子阻害物質の同定と開発について報告する。慢性関節リウマチのマウスモデル中で、Pik3cg-/-マウスはほとんどの症状が起こらないことがわかった。この防護性は好中球遊走の欠陥と相関があり、PI3Kγの治療標的としての正当性がさらに確かめられた。また、PI3Kγ阻害物質の経口投与は、慢性関節リウマチの2種の異なるマウスモデルで関節の炎症と損傷進行を抑制し、Pik3cg-/-マウスで見られた防護効果が再現された。今回の結果は、PI3Kγの選択的阻害物質が慢性関節リウマチのような慢性炎症性疾患の治療薬として有望であることを明らかにしている。

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