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造血幹細胞:Rac GTPアーゼは造血幹細胞の局在化を調節するシグナルを弁別して統合する

Nature Medicine 11, 8 doi: 10.1038/nm1274

造血幹細胞および前駆細胞(HSC/P)の生着および動員を調節する分子レベルの事象については、まだ完全に明らかにされていない。我々は、RhoGTPアーゼであるRac1およびRac2がHSCの生着および動員に対して果たす役割について検討した。in vivoで、Rac1-/-のHSCでは移植後に造血が回復しなかったが、生着後にRac1が欠失した場合は定常的な造血は障害されなかったので、Rac1は造血再構築の生着期に必要であるが、造血に特異的であるRac2は必要とされない。Rac1-/-のHSC/Pでは、in vivoで骨内膜への空間的な局在化が損なわれたが、骨髄腔へのホーミングはほぼ正常だった。一方、in vitroでの骨髄微小環境との相互作用は著しく変化した。生着後にRac1のみ欠失した場合には造血は障害を受けなかったが、Rac1Rac2の両方が欠失した場合は、無効造血およびRacを発現するHSCの強い選別とともに、骨髄からの大量のHSCの動員が起こった。この動員はRac1を再発現させると元に戻った。さらに、Racの活性化を阻害するように合理的にデザインされた可逆的低分子阻害剤により、生着可能なHSC/Pの一時的な動員が起こった。したがって、Racタンパク質は生着と動員の表現型とを弁別して調節しており、これらの生物学的過程および定常的な造血は生化学的に分離可能であると考えられる。またRacタンパク質は幹細胞の修飾における重要な分子標的である可能性がある。

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