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糖尿病:グルコース刺激によるインスリン分泌のCdk5依存的な調節

Nature Medicine 11, 10 doi: 10.1038/nm1299

糖尿病患者においては、厳格な血糖コントロールが合併症の発症を防ぐ、あるいは遅らせるために不可欠である。高血糖を改善するための現在の治療は、インスリン分泌を増加させるために主に膵ベータ細胞のATP感受性K+(KATP)チャネルを標的としている。このような現在の治療はしばしば低血糖の副作用を伴う。本論文では、MIN6細胞および膵島において、サイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5)の活性阻害は、低グルコース時にはインスリン分泌に影響がないが、高グルコースによる刺激条件下では同ホルモン分泌を高めることを示す。インスリン分泌におけるCdk5の役割は、Cdk5の活性化因子であるp35を欠損した膵ベータ細胞において確認された。また、p35ノックアウトマウスでも、高グルコース負荷に応答してインスリン分泌が高まることがわかった。Cdk5キナーゼの阻害は、ベータ細胞での高グルコース刺激において、内向きCa2+チャンネルを通るホールセル電流を増大させ、L型電位依存性Ca2+チャンネル(L-VDCC)を介したCa2+の流入を増加させたが、グルコース刺激をしない場合のCa2+の流入には影響を与えなかった。Cdk5によるL-VDCCに対する阻害的調節は、L-VDCCのα1CサブユニットのループII-IIIに存在するSer783のリン酸化の結果と考えられ、これによりSNAREタンパク質への結合が阻害され、L-VDCC活性の減少が引き起こされた。これらの結果は、Cdk5/p35がグルコース刺激によるインスリン分泌調節のための薬剤標的となる可能性を示唆している。

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