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βデフェンシンに誘引されて腫瘍内に浸潤した樹状細胞前駆体はVegf-Aの影響下で血管形成にかかわる

Nature Medicine 10, 9 doi: 10.1038/nm1097

腫瘍での血管新生への免疫機構の関与はよくわかっていない。本論文では、樹状細胞(DC)前駆体が、βデフェンシンと血管内皮増殖因子A(Vegf-A)の協働作用を介して仲介する、新しい腫瘍血管形成機構について述べる。マウスのβデフェンシン29の発現はDC前駆細胞を腫瘍に移動させ、Vegf-Aの発現が増加した場合に腫瘍での血管形成とその成長を促進した。βデフェンシンとVegf-Aを共発現しているマウスおよびヒトの卵巣癌では、DCおよび内皮細胞マーカーを発現する新規の白血球集団が見つかった。in vivoでは、腫瘍内浸潤DCは腫瘍血管に移動し、独自に新規脈管構造を構築した。骨髄由来DCはex vivoで内皮細胞に似た分化を行い、血管に移行してVegf-Aの発現レベルが高い腫瘍細胞の増殖を促進した。βデフェンシンとVegf-Aは協働して腫瘍血管形成を促進するが、それぞれの役割は異なっている。βデフェンシンはCCR6を介してDC前駆細胞を化学的に誘引するが、Vegf-Aは主としてDC前駆細胞の内皮様細胞への分化と血管への移行を誘導し、移行はVegf受容体2によって仲介される。

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