Research Highlights

MyD88ヌルマウスにおけるアテローム性動脈硬化症の軽減は血清コレステロール濃度の上昇と自然免疫のシグナル伝達経路活性化を関連づける

Nature Medicine 10, 4 doi: 10.1038/nm1008

先進国における主要な死亡原因であるアテローム性動脈硬化症は、数十年間にわたって、高コレステロール血症と関連づけられてきた。さらに最近では、アテローム性動脈硬化病変の進展は、動脈壁の持続性慢性炎症に依存することが示されている。いくつかの研究では感染性因子がこの過程に関与することが示されているが、アテローム性動脈硬化症における感染の役割については、意見が分かれている。アテローム性動脈硬化症の病因への単球とマクロファージの関与は十分に立証されているので、我々は、通常は病原体によって活性化されるマクロファージによる自然免疫のシグナル伝達経路が、高脂血症にも反応して活性化される可能性について研究を行った。本研究では、リポ多糖(LPS)受容体CD14または骨髄系細胞分化タンパク質88(MyD88)の発現を欠損する非感染の高脂血症マウスを用いて、アテローム性動脈硬化病変の進展について検討した。MyD88は、インターロイキン1(IL-1)およびIL-18に対する受容体だけでなく、トール様受容体(TLR)の下流においても細胞内シグナル伝達を行う。MyD88欠損マウスでは初期のアテローム性動脈硬化症が顕著に抑制されていたが、CD14欠損マウスでは初期病変の進展は抑制されなかった。MyD88経路を不活性化することにより、ケモカイン発現の減少に伴う動脈壁へのマクロファージの動員の抑制を介して、アテローム性動脈硬化症が抑制された。これらの結果は、高い血清脂質濃度と、病原微生物によっても活性化される炎症誘発性のシグナル伝達カスケードを関連づけるものである。

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