Press Release

GSK-3に特異的に働く薬理的阻害剤によるWntシグナル伝達

Nature Medicine 10, 1 doi: 10.1038/nm979

活性化を介したヒトおよびマウス胚性幹細胞の多分化能の維持ヒトおよびマウスの胚性幹細胞(それぞれHESCおよびMESC)は、3胚葉から生じるすべての細胞を作り出す能力を維持しながら無期限に自己複製する。ESCは発生生物学的に重要であり、また臓器再生医療に多大な影響をもたらすと考えられるが、ESCの自己複製の基盤となる分子機構は殆ど解明されていない。本論文では、HESCとMESCの両方で、自己複製の維持には標準的なWnt経路の活性化で十分であることを明らかにする。MESCの自己複製にはStat-3シグナル伝達が関与しているが、この経路を刺激してもHESCの自己複製は維持されない。また、グリコ−ゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)に特異的な薬理的阻害剤である6-ブロモインジルビン-3'-オキシム(6-bromoindirubin-3'-oxime、BIO)を用いてWnt経路を活性化させると、HESCとMESCの両方で未分化状態表現型が維持され、多分化能を有する状態に特異的な転写因子Oct-3/4、Rex-1およびNanogの発現が持続する。Wntシグナル伝達は未分化のMESCでは内因的に活性化されるが、分化後は抑制される。また、BIOを除去するとHESCとMESCは共に正常な多分化的プログラムを開始できることから、BIOが仲介するWnt活性化は機能に関して可逆的といえる。これらの結果は、BIOのようなGSK-3の特異的阻害剤の再生医療への実用的応用の可能性を示すものである。

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