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ヘモグロビンスイッチング:HIC2はBCL11Aの転写を抑制して発生過程で起こるヘモグロビンスイッチングを制御する

Nature Genetics 54, 9 doi: 10.1038/s41588-022-01152-6

ヘモグロビン産生における胎児型から成体型へのスイッチングは、ヘモグロビン異常症の治療に関連した発生遺伝子制御のモデルである。成体の赤血球系細胞で胎児型βグロビン(HBG)遺伝子を抑制する転写因子であるBCL11Aの発現は、主に転写レベルで制御されているが、その詳しい機構については分かっていない。今回我々は、HIC2がBCL11Aの転写抑制因子であることを明らかにした。HIC2とBCL11Aは、発生中に交互に発現しており、成体の赤血球系細胞でHIC2を強制的に発現させると、BCL11Aの転写が抑制され、HBGの発現が誘導された。HIC2はBCL11Aの赤血球エンハンサーに結合して、クロマチン接近性と転写因子GATA1の結合を低下させることで、エンハンサー活性とエンハンサー–プロモーター間の接触を減少させる。DNA結合と結晶学的な解析では、BCL11Aの重要なエンハンサーであるGATA1での結合をHIC2が阻害する機構の1つは、直接的な立体障害であることが明らかになった。逆に、胎児の赤芽球でHIC2を喪失させると、エンハンサーの接近性、GATA1の結合、BCL11Aの転写が増加した。従って、HIC2は、BCL11Aの発生制御を介したヘモグロビンスイッチングの進化的に保存された調節因子であることが明らかになった。

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