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βヘモグロビン異常症:自然に生じた調節配列の変異によってBCL11AやZBTB7Aの結合が損なわれることで、胎児型グロビン遺伝子の発現は上昇する

Nature Genetics 50, 4 doi: 10.1038/s41588-018-0085-0

鎌状赤血球症(SCD)やβサラセミアといったβヘモグロビン異常症は、成人型βグロビン遺伝子(HBB)に生じた変異によって発症する。出生後に発現が抑制される胎児型γグロビン遺伝子(HBG1およびHBG2)を再度発現させることが、SCDやβサラセミアに対応するための治療上の目標の1つである。遺伝性高胎児ヘモグロビン症(HPFH)は成人期を通じてγグロビン遺伝子の発現が維持されるまれな良性疾患で、その病型の中に、γグロビン遺伝子の転写開始部位のおよそ115 bpおよび200 bp上流に位置するプロモーター領域に生じた点変異を原因とするものがある。今回、主要な胎児型グロビン遺伝子のリプレッサーであるBCL11AおよびZBTB7A(別名LRF)がそれぞれ、−115 bpと−200 bpの部位に直接結合することを見つけた。さらに、HPFHに見られる自然に生じる変異をCRISPR–Cas9によって赤血球細胞に導入したところ、リプレッサーの結合が損なわれ、γグロビン遺伝子の発現が上昇した。上記の知見は、HPFHに伴うこれらの変異がどのように作用するかを明らかにし、また、BCL11AとZBTB7Aが胎児型グロビン遺伝子の発現を直接抑制する主たるリプレッサーであることを実証するものである。

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