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卵割期:DUX4ファミリー遺伝子ネットワークの保存と革新

Nature Genetics 49, 6 doi: 10.1038/ng.3846

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD:MIM158900、MIM158901)は、骨格筋における転写因子DUX4の発現異常によって引き起こされる。FSHDの動物モデル作製では、他の種においてDUX4転写プログラムが保存されているかどうかについての情報が不十分であることが障害となっている。マウスDUXとヒトDUX4の結合モチーフは異なるが、どちらもマウス筋細胞あるいはヒト筋細胞において、MERVLやERVL–MaLRのレトロトランスポゾンといった卵割期胚に関連する遺伝子を活性化する。本論文では、マウス細胞に発現させたヒトDUX4は、従来型プロモーターからの卵割期遺伝子の活性化を中程度に維持するが、MERVLプロモーターからの遺伝子活性化を行わないことを明らかにした。つまり、祖先型DUX4が調節する遺伝子が卵割期胚の特徴であり、それらは従来型プロモーターから活性化されること、そして、DUX4とDUXのホメオドメインの分岐はレトロトランスポゾンの特異性と相関することが分かった。これらの結果は、中心的な転写プログラムは保存する一方でレトロトランスポゾンプロモーターにより革新を行うというバランスが、種においてどのような仕組みで保たれるかを明らかにする手掛かりとなり、また、FSHDトランスクリプトームを再現する動物モデルのための基盤を確立するものである。

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