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ペルオキシソームと神経:ペルオキシソームを欠損するオリゴデンドロサイトによって引き起こされる軸索消失と神経炎症

Nature Genetics 39, 8 doi: 10.1038/ng2070

オリゴデンドロサイトは、中枢神経系では、軸索をミエリン化してインパルス伝導速度を上昇させるとともに、軸索が正常な機能を営むことに貢献している。多発性硬化症では、自己免疫性の攻撃が起こって、脱髄が引き起こされるが、この疾患の進行や軸索変性でオリゴデンドログリア細胞がどのような役割を果たすのかはわかっていない。本論文では、オリゴデンドロサイトがペルオキシソームをもち、成人期を通して白質路の維持に不可欠な機能を担っていることを示す。ミエリン形成を行っているグリア選択的に輸入因子PEX5を不活化することによって、正常に発生後、数カ月以内に運動失調、震え、および早死を示す変異マウスを作製した。オリゴデンドロサイトに機能的なペルオキシソームが存在しないと、広範囲にわたる軸索変性や、皮質下での進行した脱髄が引き起こされたが、グリアの生存は阻害されなかった。さらに、強力な炎症促進環境が生じ、予想もしないことに、B細胞や活性化CD8+ T細胞の脳病変部への浸潤が引き起こされた。オリゴデンドロサイトがペルオキシソームによって軸索変性や神経炎症に対抗する神経保護に不可欠な機能を得ること、また、これがヒトの脱髄性疾患に関係していることを結論する。

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