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hyh変異によって、神経系細胞におけるタンパク質の先端(apical)側への局在および細胞運命の制御においてのαSnapの役割が明らかとなった

Nature Genetics 36, 3 doi: 10.1038/ng1302

hyh(跳躍性の歩行異常をともなう水頭症)マウスは、出生の時点で大脳皮質が際立って小さく、生後に進行性の心室拡張によって死亡する。本論文で我々は、hyhマウスで大脳皮質が小さいのは、神経系細胞の細胞運命に異常が生じるためであることを示す。hyhマウスでは、神経前駆細胞が早い時期に細胞周期から離脱してしまうため、それより早い段階で生まれる大脳皮質深層の神経細胞は十分に作られるが、やがて前駆細胞が枯渇してしまって、それより後に生まれるはずだった大脳皮質表層の神経細胞が作られず、これによって大脳皮質が小さくなってしまう。hyhマウスは、可溶性N-エチルマレイミド感受性因子(NSF)結合タンパク質α(αSnap)をコードするNapa遺伝子に、hypomorphicなミスセンス変異がある。αSnapは、多くの細胞現象に関わるSNAP受容体(SNARE)を介した小胞融合に関与するタンパク質である。Napaの機能欠損変異は胎性致死である。hyhマウスにおける神経系の細胞運命の異常は、E-カドヘリン、β-カテニン、atypicalプロテインキナーゼC(aPKC)、およびINADL(inactivation-no-afterpotential D-like,不活性化後電位欠如D類似タンパク質、あるいはLin7またはPals1関連タンパク質としても知られる)など細胞運命の制御に関わっていることが示唆される、本来、先端(apical)側に存在するはずの多くのタンパク質の局在の異常にともなって起きている。SNARE Vamp7の先端側への局在もまたhyhマウスではみられない。これらのことから、αSnapは神経上皮性細胞における先端側へのタンパク質の局在および細胞運命の決定に必須の役割を果たしていると考えられる。

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