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個別化ホスホプロテオミクスが機能的シグナル伝達を見いだす

Nature Biotechnology 40, 4 doi: 10.1038/s41587-021-01099-9

タンパク質リン酸化は、環境の情報と細胞の情報を動的に統合し、生物学的過程を制御する。摂動によって調節される何千か所ものリン酸化部位から機能的なリン酸化を包括的な規模で見いだすことは、大きな課題である。本論文では、実験的解析とコンピューターによる解析を組み合わせ、ヒトの表現型の変動を利用してシグナル伝達を生物学的機能と結び付ける「個別化ホスホプロテオミクス」を紹介する。我々は、介入に対する個々の被験者のホスホプロテオームの応答を測定し、対応する表現型も並行して評価した。この手法を適用して、ヒトの骨格筋で運動がインスリンシグナル伝達をどのように強化するかを調べたところ、グルコース代謝に関与するタンパク質上に、既知のリン酸化部位と未発見のリン酸化部位の両方が見いだされた。これには、mTORがAMPKのS377を直接リン酸化するというmTORとAMPKの協力関係が含まれ、それが代謝調節で役割を果たしていることが明らかになった。以上の結果は、個別化ホスホプロテオミクスが複雑な生物学の背後にあるシグナル伝達を研究するための一般的な手法であることを示している。

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