Nature ハイライト

心血管生物学:IDO1が一重項酸素分子を介して血管の弛緩を調節する

Nature 566, 7745

血管の炎症は、動脈内皮細胞を刺激してインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を発現させる。この酵素はトリプトファンのN-ホルミルキヌレニンへの酸化に関与し、N-ホルミルキヌレニンはその後キヌレニンへと変換される。血管径の調節におけるIDOの役割には、このキヌレニンが介在すると考えられてきた。しかし今回C Stanleyたちは、キヌレニンが血管径を調節していないことを明らかにし、さらに、IDO1が一重項酸素分子(1O2)の形成にも関与しており、この1O2が続いて内皮細胞でL-トリプトファンをシス-ヒドロペルオキシド(cis-WOOH)へと変換するという予想外の知見を得た。cis-WOOHは次に血管平滑筋細胞にシグナルを出し、PKG1αの酸化還元二量体化とそれに続くプロテインキナーゼG1αのリン酸化を引き起こし、その結果、血管が弛緩する。この機序は、健康なマウスでは働かないが、血管に炎症のあるマウス、アテローム性動脈硬化や心臓の圧負荷などの病的状態のあるマウスでの血圧調節に重要な役割を果たしている。

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