Nature ハイライト

微生物学:ブルース・トリパノソーマの抗原変異の制御

Nature 563, 7729

ブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)の抗原変異は、BES(bloodstream expression site)として知られる、特化した染色体領域から変異表面糖タンパク質(VSG)群の優性(顕性)な単一遺伝子の転写が起こることに依存している。トリパノソーマのゲノムにはいくつかのBESが存在し、転写が起こったBESは、他の対立遺伝子の転写を阻止する抑制された基底状態から単一対立遺伝子排除を受ける。発現はESB(expression site body)として知られる特化した核構造において起こる。抗原変異は、活性なBESのVSGを変化させる組換えを介して、あるいはESBのBESに変化が起こることで達成される。この領域の詳細な機構は、トリパノソーマの完全なゲノム塩基配列が得られていないことが障害となり明らかになっていない。というのは、抑制状態のVSGの塩基配列は主にサブテロメア領域に縦列に位置していて、これは二倍体ゲノムの約30%を構成しており、これまでの塩基配列解読の取り組みでは解読できていないからである。著者たちは今回、ロングリード塩基配列解読法と染色体コンホメーション解析を初めて組み合わせて用いるという離れ業により、ブルース・トリパノソーマのほぼ完全なゲノム塩基配列を示している。さまざまな技術を用いることで、ヒストンバリアントであるH3.Vがゲノム構成、H4.VがDNA接近性における役割を介して、この寄生虫の抗原変異を制御していることが示唆された。

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