Nature ハイライト

動物:ニワトリにも福祉を

Nature 427, 6972

養鶏場のニワトリの福祉に飼育密度が影響することは疑う余地がないが、今週号の報告によると福祉に影響する要因はそれだけではないという。湿度や空気中のアンモニア濃度といった環境要因もニワトリの健康状態に影響しているらしいのだ。 養鶏は巨大産業である。世界の食卓に供される食肉用ブロイラーの数は年間およそ200億羽に上る。だが、この業界には動物福祉への配慮が足りないと非難する声も上がっている。すし詰め状態の飼育が健康障害を起こすというのが大方の見方である。 M Stamp Dawkinsたちは今回、大手の養鶏業者10件を対象として270万羽のニワトリの調査を行った。このように業者の協力を得た調査は前例がない。ニワトリを高密度で飼育した場合には、もっとゆとりをもたせた場合に比べて押し合うことが多く、生育も遅かった。ところが、飼育密度の違いよりも目立ったのは業者間の環境条件の違いのほうだった。 温度や湿度、敷料の水分量、空気中のアンモニア濃度もニワトリの健康状態に影響しており、そのため、なかには高い飼育密度にも他よりうまく対処している業者もあった。 欧州連合は現在、養鶏の飼育密度基準を設定しようとしており、今回の研究は時宜を得たものである。養鶏環境条件を考慮せずに過密飼育を制限する規制措置を設けると、欧州の養鶏業者に大きな影響を与えながらも動物福祉の面では期待されるような改善をもたらさない恐れがある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度