Nature ハイライト

がん:胸腺の老いたT細胞に取って代わる新しい細胞

Nature 509, 7501

胸腺では、T細胞が前駆細胞から分化し、胸腺中の前駆細胞は新たにやってくる骨髄由来前駆細胞に絶えず置き換えられている。今回、H Rodewaldたちは、この交代が「老いた」細胞と「新しい」細胞の間の競合の結果であることを示した。マウスでは、競合がない場合、つまり新しい骨髄由来前駆細胞の流入を阻止すると、老いた前駆細胞は自己複製能を再獲得し、ついには形質転換を起こして、これがヒトの場合と似たT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の発症につながる。これと同時に、ヒトのT-ALLでも見られることの多い遺伝子発現の変化や遺伝的変異が起こる。従って、細胞競合は腫瘍抑制機構として機能している可能性がある。また、X連鎖重症複合免疫不全症患者で遺伝子を修正した自家前駆細胞による治療の後で見られるT細胞性白血病については議論が盛んだが、この研究はその説明の助けにもなるかもしれない。

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