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遺伝学:超遺伝子は遺伝子をどれだけ超えるのか?

Nature 507, 7491

有毒種のベニモンアゲハ(上)とその翅紋様を模倣している無毒種のシロオビアゲハ(下)。
有毒種のベニモンアゲハ(上)とその翅紋様を模倣している無毒種のシロオビアゲハ(下)。 | 拡大する

Credit: Krushnamegh Kunte (上); Khew Sin Khoo(下)

一部のチョウでは、雌雄のどちらか一方のみ(普通は雌)が、毒を持つチョウの翅の紋様に擬態する。1960年代に、この現象は「超遺伝子」の制御下にあると考えられるようになった。さらに最近になって、超遺伝子は密接に連鎖した遺伝子からなるクラスターで、各遺伝子は翅の擬態紋様形成のそれぞれ別の面に影響しているのではないかという説が出てきた。しかし今回、M Kronforstたちは意外な結果を報告している。よく知られた超遺伝子擬態の例であるシロオビアゲハ(Papilio polytes)では、超遺伝子が実は単一の遺伝子であることが分かったのである。さらに驚いたことに、この遺伝子が、性決定経路を構成する遺伝子としてよく知られたdoublesexであることも明らかになった。遺伝子発現とDNAの塩基配列変異のデータから、アイソフォームの発現の違いとタンパク質のアミノ酸配列の進化も、doublesexの擬態対立遺伝子の間の違いに寄与していることが示唆された。つまり、シロオビアゲハの擬態超遺伝子は、これまでに出された複数の仮説を融合させたような性質の遺伝子であり、擬態を制御するのは単一遺伝子だが、複数の機能的変異の助けが必要らしい。

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