Nature ハイライト

発生:胚でのレチノイン酸の分布

Nature 496, 7445

モルフォゲンは拡散性のシグナル分子であり、細胞にどういう運命を与えるかは、モルフォゲンの濃度によって異なる。レチノイン酸は特殊なモルフォゲンで、ポリペプチドではなく脂溶性低分子である。ほとんどのモルフォゲンは蛍光標識と融合させることでin vivoでの観察が可能だが、ペプチドではないレチノイン酸は直接観察がもっと難しく、胚でどのような空間的分布をしているのかはいまだ不明である。今回、宮脇敦史(理化学研究所)たちは、GEPRAという遺伝学的にコードされたプローブを開発した。これを使えばin vivoでのレチノイン酸濃度の定量的測定が可能となる。ゼブラフィッシュ胚では、前後軸に沿ったレチノイン酸の直線的な濃度勾配があることが示された。これは、1970年にフランシス・クリックが提唱したモルフォゲン動態のソースシンクモデルを裏付けるデータであると考えられる。

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