Nature ハイライト

生態:転換点までの距離を測る

Nature 496, 7445

「転換点」では、小さな変化が系の状態を大きく変えることがある。この転換点に近づきつつある複雑系の挙動は、きわめて予測が難しいことが知られている。最近の研究では、回復時間、変動の規模や時間スケールの変化などの、転換点に先立って見られる時間的要素が明らかにされている。今回、L Daiたちは、直近の隣接集団間の分散管理によって空間的に連結された出芽酵母集団を増殖させ、撹乱(周囲よりも希釈度の高いスクロース溶液の投入)後の集団の崩壊に先立って見られる時空間的パターンを探した。希釈された区画からの距離が大きくなるにつれて、酵母集団の密度は定常状態に向かって徐々に上昇した。集団が崩壊に近い場合は、連結された集団が回復までに要する距離はずっと大きくなった。今回の研究は、回復時間の空間版として「回復距離」という概念を導入している。自然界では性質の異なる領域間の境界はどこにでも存在するため、海洋でも陸上でも、多くの系がそのような空間的不安定性に従っている可能性が考えられる。

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