Nature ハイライト

化学:ヒドロキシメチレンの短い一生

Nature 453, 7197

2個の非結合性価電子をもち、結合を2つしか形成しない炭素原子を有する有機分子は、カルベンとして知られている。カルベンの多くは非常に反応性が高く、寿命が短すぎて直接観察できないとずっと考えられてきた。これらのうち、ヒドロキシメチレン(H-C-OH)は、ホルムアルデヒドの光化学反応に関係していると見なされており、地球外環境で炭水化物を形成すると考えられてきたために特に関心が集まっているが、これまで観察されたことがなかった。しかし今回、ヒドロキシメチレンが合成され、11 Kでアルゴンマトリックス中に捕捉された。ヒドロキシメチレンはこのような条件下でさえ、水素の高速トンネリングを用いる機構で転位を起こして、わずか2時間という短い半減期でホルムアルデヒドになる。このことは、ヒドロキシメチレンが分光学的に確認される見込みが低い、つまり、宇宙での糖質形成に関与するほど長くは存在しそうにないことを意味している。

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