Nature ハイライト

細胞:がん細胞の代謝とワールブルク効果

Nature 452, 7184

胎児の組織や腫瘍のような急速に増殖する組織の細胞の代謝調節は、成体のほとんどの正常組織とは異なっており、多くの腫瘍細胞では解糖系酵素のピルビン酸キナーゼ(PKM2)について、成体のもつM1型アイソフォームではなく、M2(胎仔)型が発現することが知られている。今週号には、腫瘍細胞のPKM2の役割に注目した2本の関連する論文が掲載されている。最初の論文は、プロテオミクスによるスクリーニングを行い、PKM2がホスホチロシン結合タンパク質であることを突き止めている。内在性PKM2をホスホチロシンと結合できない点変異体に置換すると、培養がん細胞の増殖が遅くなり、これはがん細胞の増殖にホスホチロシン結合を介したPKM2の制御が不可欠であることを示している(Article p.181)。もう1つの論文では、PKM2が腫瘍形成を促進し、細胞の代謝を切り替えて、乳酸生成を増加させて酸素消費を低下させることを明らかにしている。このパターンは、1930年代にオットー・ワールブルクが提唱したワールブルク効果の特徴、つまり多くのがん細胞は、ミトコンドリアによるピルビン酸の酸化ではなく、細胞質での乳酸発酵とそれに続く解糖系によってエネルギーを産生するという観察結果によく似ている(Letter p.230)。

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