Nature ハイライト

気候:熱帯低気圧が起こす海洋混合

Nature 447, 7144

熱帯低気圧は海洋上層を混合することが知られており、この混合は熱を下方に「送り込む」ことで、局所的なスケールで海洋表層を冷却している。この過程は全球規模でも海洋混合に重要な役割を果たしている可能性が示唆されてきたが、今回の新たな計算によって、熱帯低気圧が実際に、熱帯域海洋表層の相当度の冷却と鉛直混合を引き起こしていることが示された。この過程により下方に送り込まれる熱は、両極方向への熱輸送と釣り合うと考えられるので、極への海洋の熱輸送の最大値の約15パーセントが熱帯低気圧による混合に伴うものであることが示される。熱帯低気圧がもたらす混合の大きさは海表面水温とも関連していることから、熱帯の海表面水温の将来の変化は、海洋循環と海洋の熱輸送(共に海洋混合の影響を受ける)の両方に重要な影響を及ぼす可能性が示唆される。気候変化を予測するモデルは、こうした影響を考慮に入れることにより得るところがありそうだ。先週号のEssayでは、M Visbeckが、海洋深部から上方へと移動する海洋水によって生じる「引き揚げる力」が海洋混合を増大する要因の1つであると論じている。また、今週号のNews Featureでは、Q Schiermeierが、海洋混合に関する最近の研究状況について概観している。Newsには、米国立ハリケーンセンターが発表した今年の暴風に関する最新の予想が報告されている。

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