Nature ハイライト
コロナウイルス:D614Gスパイク変異はSARS-CoV-2の適応度を変化させる
Nature 592, 7852
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のD614G置換は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)において優勢となっている。しかし、この変異株がウイルス拡散やワクチンの有効性に及ぼす影響については、まだ明らかになっていない。今回我々は、USA-WA1/2020 SARS-CoV-2株にスパイクタンパク質のD614G置換を導入し、この置換はウイルス粒子の感染性や安定性を増加させることで、ヒト肺上皮細胞や初代ヒト気道組織でのウイルス複製を増強することを見いだした。D614Gスパイクタンパク質を発現するSARS-CoV-2(G614ウイルス)を感染させたハムスターでは、鼻腔洗浄液や気管での感染力価が上昇していたが、肺ではこの上昇は見られなかった。これは、この変異がCOVID-19患者の上気道でウイルス量を増加させ、伝播を増加させる可能性があるという臨床的証拠を裏付けている。D614ウイルスを感染させたハムスターの血清は、D614ウイルスよりもG614ウイルスに対してやや高い中和抗体価を示しており、これは、D614G変異が臨床試験中のワクチンのCOVID-19に対する防御能を低下させる可能性は低く、治療抗体を、流行中のG614ウイルスに対して検証すべきであることを示唆している。臨床的な知見と合わせて、我々の研究は、ウイルス拡散におけるこの変異株の重要性や、ワクチン効果や抗体治療に関するその意義を明らかにしている。
2021年4月1日号の Nature ハイライト
物性物理学:モアレグラフェンにおける相関を熱力学的に調べる
ナノスケール材料:金属の直接3Dナノ造形
材料科学:アモルファス固体の構造研究方法
生態学:温暖化は栄養段階間のエネルギー転換を減少させる
発生生物学:長鎖ノンコーディングRNAの変異が肢形成異常を引き起こす
幹細胞:短腸症候群の治療法候補としてのオルガノイド移植
植物科学:植物の2つの免疫経路間のクロストーク
コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイク変異株はウイルス複製を増強する
がん免疫学:黒色腫での細菌由来ペプチドの提示
分子生物学:ヌクレアーゼ複合体を凝縮する