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植物科学:イネの窒素利用効率を高める遺伝子

Nature 590, 7847

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Credit: taka4332 / iStock / Getty Images Plus

窒素肥料は作物の収量を増大させるために広く使われているが、環境には悪影響を及ぼす。イネのスーパー品種は、過剰施肥のために窒素利用効率(NUE)が低い傾向がある。今回C Chuたちは、52か国で栽培されているイネの主要な在来品種を代表する110系統からなるパネルにおいて、窒素に対する分蘖応答(TRN;NUEの代理指標)に関してゲノム規模の関連解析を行った。その結果、この表現型の変動の約20%を説明する6番染色体上の座位としてOsTCP19が特定され、この遺伝子が、ブラシノステロイドのシグナル伝達およびイネの分蘖に関与するDLT遺伝子の転写抑制を介して作用する、イネの分蘖の負の調節因子であることが明らかになった。OsTCP19の高TRNハプロタイプは、主に低窒素土壌に育つ栽培品種で見られるが、高窒素土壌で栽培される現代の栽培品種の大半では失われていることが分かった。著者たちは、的を絞った育種計画によってそうした栽培品種にOsTCP19の高TRNハプロタイプを再導入することで、穀粒収量を犠牲にすることなく農業の持続可能性を高められる可能性があると提案している。

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