Nature ハイライト

原子核物理学:散らかった陽子の内部をじっくりと見る

Nature 590, 7847

今回、米国フェルミ国立加速器研究所で行われてきた、液体水素や液体重水素の標的に120 GeVの陽子ビームを照射して陽子の内部構造を調べる「SeaQuest実験」の結果が報告されている。陽子内部では、強い力によって、ほんの一瞬だけ存在する物質–反物質クォーク対が絶え間なく生成されている。著者たちは、クォーク–反クォーク対が消滅してミューオン対を生成する反応を測定することで、陽子内部の反クォークの分布をそれらの運動量の関数として表した、これまでで最も精密な測定結果を提示している。今回の結果によって、理論予測とは対照的に、反ダウンクォークと反アップクォークの存在量の間に非対称性があることが実証されたが、描かれた描像はこれまでの実験とは質的に異なっていた。これは、現状と今後の実験データに影響を与えるとともに、この現象の説得力のある理論的説明がまだ見つかっていないことを示唆している。

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