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原子核物理学:陽子の中の反物質の非対称性

Nature 590, 7847 doi: 10.1038/s41586-021-03282-z

陽子の基本的な構成要素がクォークとグルーオンであることは、数十年前から知られている。しかし、このクォークやグルーオンから、どのようにして量子力学的な束縛状態である陽子が生じ、さらにスピンのような物理的性質が生じるかについては、理論面でも実験面でも我々はまだ不完全な理解しか持ち合わせていない。陽子は最も簡単な描像では、2つのアップクォークと1つのダウンクォークから構成されている。これらのクォークは陽子の質量のわずか数%しか担っておらず、陽子の全質量の大半は、クォークの運動エネルギーとポテンシャルエネルギー、および強い力に由来するグルーオンのエネルギーの形をとっている。この強い力の本質的な特徴の1つは、量子色力学(QCD)によって記述されるとおり、陽子内部に非常に短い時間しか存在しない物質–反物質クォーク対を生成できることである。それらの対はほんの一瞬しか存在しないので、陽子内部の反物質クォークを調べることは難しいが、その存在は、物質–反物質クォーク対が消滅する反応中に見いだすことが可能である。強い力によってクォーク–反クォーク対が生成されるという描像では、反物質アップクォークと反物質ダウンクォークの質量がほぼ同じで陽子の質量と比べると小さいことから、反物質アップクォークと反物質ダウンクォークが存在する確率分布は、これを運動量の関数として表すとほぼ同じはずである。今回我々は、ミューオン対生成の測定によって、これらの分布が大きく異なり、運動量の広い範囲にわたって反物質ダウンクォークの方が反物質アップクォークより多いという証拠を得た。陽子の中の反物質の非対称性の起源についてはいくつかの機構が提案されていたが、以前の実験結果はそれらと相いれないものであった。今回の実験結果は、それらの機構を再評価させると予想され、こうした機構間の違いを見分けることのできる今後の実験の方向性を示すものである。

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