Nature ハイライト

微生物学:免疫進化の物語における細菌のSTING

Nature 586, 7829

STING(stimulator of interferon genes)はヒト細胞の受容体の1つであり、細菌感染の際に放出される外来のサイクリックジヌクレオチド(CDN)を感知し、その結果、Toll様/IL-1受容体(TIR)ファミリーのNADアーゼが関与する自然免疫応答を開始させる。P Kranzuschたちは今回、構造的手法と生化学的手法を組み合わせて用いて、STINGとそれに関連する免疫経路が細菌に由来するという証拠を示している。彼らは、ファージ感染を防ぐ原核生物の防御アイランド(defence island)内にコードされている、STINGの機能的な細菌ホモログを突き止めた。結晶構造から、後生動物STINGと高い類似性を持つ足場が明らかになり、STINGに隣接する酵素cGASヌクレオチジルトランスフェラーゼ(CD-NTアーゼ)によって合成される、CDNであるサイクリックdi-GMPに対する特異性が明らかになった。CDNの認識は、TIRエフェクタードメインのオリゴマー化とNAD+の迅速な切断につながることも示された。比較構造解析により、軟体動物のSTINGホモログにはドメインが追加されていることが明らかになり、細菌から後生動物、ヒトへの進化の経路が示唆された。この研究はcGAS–STING経路が保存されている証拠を示しており、このことから、細菌にルーツを持つ生物間には共通する抗ウイルス自然免疫応答があると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度