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ワクチンアジュバントの科学に登場した新たな概念

Nature Reviews Drug Discovery 20, 6 doi: 10.1038/s41573-021-00163-y

アジュバントは、免疫応答の規模、範囲、耐久性を増強するワクチン成分である。ミョウバンは、1920年代に導入されてから70年間にわたってヒトへの使用が認可された唯一のアジュバントであった。1990年代以降は、さらに5種類のアジュバントが認可ワクチンに配合されているが、これらのアジュバントが作用する分子機構は部分的にしか解明されていない。ところが、パターン認識受容体(PRR)を介した自然免疫系の活性化の理解が革命的に進展して、アジュバントの機構的理解が深まっており、最近の概念的進歩によって、組織の損傷、いろいろな形態の細胞死、代謝センサーと栄養センサーのいずれもが、自然免疫系を調節でき、適応免疫が活性化されるという考えが強調されるようになった。さらに、システム生物学を用いて、ワクチンに対する免疫応答を駆動する分子ネットワークを探索する研究(「システムワクチン学」)における最近の進歩により、機構に関する新たな知見が明らかになり、ワクチンの探索・開発過程の新しいパラダイムがもたらされている。本論文では、アジュバントに関して「既知と自覚されている事柄」と「未知と自覚されている事柄」を総説し、新たな概念を論じた上で、自然免疫とシステムワクチン学に関する我々の知識の拡大が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と将来のパンデミック(世界的大流行)に対するワクチンに使用する新規アジュバントの科学と開発に新しい活気を与える過程を取り上げる。

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