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臓器チップ:これからの10年間

Nature Reviews Drug Discovery 20, 5 doi: 10.1038/s41573-020-0079-3

臓器チップ(OoC)は、microphysiological system(微小生理組織の培養計測システム)や「組織チップ」とも呼ばれ(これらの用語はいずれも同義)、創薬過程と開発過程の複数の段階に有益な情報をもたらす可能性があることから、近年、かなりの関心を集めている。この革新的なデバイスは、ヒト臓器の正常な機能と疾患病態生理に関する知見をもたらすだけでなく、ヒトにおける治験薬の安全性と有効性をより正確に予測できる可能性がある。従って、OoCは、これまで前臨床研究で用いられてきた細胞培養法やin vivo動物試験に対して、短期的には新たな有益な方法として加わり、長期的には部分的に置き換わる可能性が高い。これまでの10年間、OoCの分野では、生物学・工学的側面の高度化、生理的関連性の実証、適用範囲の点で劇的な進歩があった。また、こうした進歩に伴い、新たな課題と機会が明らかになり、基礎研究とトランスレーショナルリサーチへのOoCの適用可能性が十分に実現されるためには、複数の生物医学分野と工学分野の専門知識が必要とされる。本総説では、急速に進化するOoC技術の概略を示し、現在の応用例とその実施に伴う注意事項を論じ、これから10年間の方向性に関する提案を行う。

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