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脳のエネルギーを救済する:加齢に伴う神経変性疾患の新たな治療概念

Nature Reviews Drug Discovery 19, 9 doi: 10.1038/s41573-020-0072-x

脳は、ATPという形でエネルギーの持続的な供給を必要とする。ATPのほとんどは、ミトコンドリアにおいて、グルコースから酸化的リン酸化によって産生され、細胞質における好気的解糖によって補完される。グルコースレベルが制限されている場合には、肝臓で生成されるケトン体と、骨格筋の運動に由来する乳酸も、脳の重要なエネルギー基質になることがある。加齢に伴う神経変性疾患では、脳のグルコース代謝が、進行性、かつ領域特異的・疾患特異的な様式で悪化していく。これはアルツハイマー病で最もよく特徴付けられている問題であり、この疾患では、こうしたことが症状の出る前から始まる。本総説では、脳のエネルギー特性を改善、保存、あるいは救済することにより、加齢に伴う神経変性疾患に対抗するための治療戦略の現状および展望について述べる。本稿では、酸化的リン酸化と解糖の回復、インスリン感受性の増大、ミトコンドリアの機能障害の修正、ケトンを利用した介入、大脳のエネルギー特性を調節するホルモンを介した作用、RNA治療薬、そして補完的な生活習慣の多くの変更などのアプローチを紹介する。

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