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治療標的としてのアミノアシルtRNA合成酵素

Nature Reviews Drug Discovery 18, 8 doi: 10.1038/s41573-019-0026-3

アミノアシルtRNAシンテターゼ(ARS)は、タンパク質合成に必須の酵素で、進化的に保存された酵素機構を持つ。ARSは生物全体で類似しているにもかかわらず、これまで研究者は、病原体由来ARSとヒト由来ARSの触媒クレフトの構造上の差異に基づいて、有効な感染症治療薬を作り出してきた。これに対して、最近のゲノミクス、プロテオミクス、ファンクショノミクス(functionomics)の進歩によって、ヒトARSの疾患に関連した変異、発現の変化、分泌の変化、相互作用の変化という予想外の発見があり、ヒトARSには、タンパク質合成における触媒的役割の他にも隠された生物学的機能を持つことが明らかになった。これらの研究からはまた、触媒部位の直接標的化、疾患に関連するタンパク質間相互作用の制御、分泌されたARSタンパク質またはその部位からの新規生物製剤の開発などの複数の手段を通じて、ARSが新たな治療標的および治療薬の未開拓の宝庫となる可能性を秘めていることも明らかになった。本総説では、自己免疫疾患、希少疾患、がんなどの疾患におけるヒトARSの新たに分かった生物学的性質と治療応用について論じる。

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