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神経発達症群の新薬開発:脆弱X症候群から学んだ教訓

Nature Reviews Drug Discovery 17, 4 doi: 10.1038/nrd.2017.221

脆弱X症候群(FXS)などの神経発達症群は、生涯にわたる認知欠損や行動欠損を引き起こし、公衆衛生上の大きな負担になっている。FXSは、最もよく見られる単一遺伝子性の知的能力障害と自閉症であり、その原因遺伝子FMR1に関連する根本的な病態生理をめぐって精力的な研究が進められてきた。この神経発達症の基盤をなすと考えられているシナプス機能の重大な変化については、FXSの動物モデルを用いて遺伝学的手法と薬理学的手法による特徴解明と救済が行われた。これらの前臨床研究による揺るぎない知見は、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)アンタゴニストの第IIb相臨床試験とGABAB受容体アゴニストの第III相臨床試験を含む遺伝学的に定義された神経発達症のためのこれまでで最も包括的な新薬開発プログラムの実施につながった。しかし、いずれの臨床試験でも治験薬の有効性が明確に実証されておらず、FXSとその他の神経発達症群の新薬開発における知識の欠落の程度がはっきりと分かった。本総説では、これまでの研究における今後問題となりそうな論点と今後の前臨床試験と臨床試験の方向性を検討する。FXSは、神経発達症群の新薬開発活動の最前線にあり、その過程で学んだ教訓も神経発達症群にとって重要なものとなる。

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