Perspective

表現型創薬の可能性と課題:業界の見方

Nature Reviews Drug Discovery 16, 8 doi: 10.1038/nrd.2017.111

表現型創薬(PDD)は、特定の薬剤標的の正体や、疾患における役割に関する仮説の知識に依存しない。これは製薬業界で過去30年間にわたって広範に用いられてきた標的に基づく戦略とは対象的である。にもかかわらず、最近はPDDに対する関心が再び高まってきており、その根底には、十分に解明されていない各種疾患の複雑性の解明と画期的医薬品(ファースト・イン・クラス)の開発がPDDによって実現される可能性があることや、細胞を用いた表現型スクリーニングのツールが大きく進歩したことがある。しかしPDDは、ヒット化合物の検証、標的のデコンボリューションなど、かなり難しい問題に直面している。本論文では、製薬業界でPDDに携わる研究者が学んだ教訓に焦点を合わせて、プレシジョン・メディシンの時代に細胞の疾患表現型を決定する上で「オミックス」の知識が及ぼす影響を考察し、chain of translatabilityという概念を紹介する。我々は、PDDが創薬のポートフォリオに対して最も有効に価値をもたらし、新薬の発見と開発に寄与できる特徴と領域を明らかにした上で、PDDと関連する課題と不確実性を説明することによって、PDDの便益と費用に関する現実的な予想を立てやすくすることを特に目指した。

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