Review Article

がん、感染症、神経変性疾患に対するホスホリパーゼD標的療法

Nature Reviews Drug Discovery 16, 5 doi: 10.1038/nrd.2016.252

脂質セカンドメッセンジャーは、細胞機能で極めて重要な役割を担っており、炎症、悪性形質転換、浸潤性、神経変性疾患のみならず感染過程やその他の病態生理過程の基盤となる分子機構に寄与している。ホスホリパーゼD(PLD)のアイソザイムであるPLD1とPLD2は、細胞表面にあるGタンパク質共役受容体(GPCR)、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)、インテグリンを含むさまざまな受容体の下流で、シグナルによって活性化するホスファチジン酸(PtdOH)の主要な供給源になっている。また、アイソザイム選択的PLD阻害剤の開発と分子遺伝学の最近の進展で、哺乳類細胞のPLDアイソザイムと病原微生物がヒトのいくつかの疾患の貴重な治療標的となる可能性が示唆されている。アイソザイム選択的阻害剤からは、PtdOH生合成経路間の複雑な相互関係とPtdOHの病態生理における役割が明らかになっている。かつてPLD酵素は「新薬の開発につながらない(undruggable)」と考えられ、その理由として、細胞シグナル伝達におけるPtdOHの普遍的性質と阻害剤をヒトに投与するには毒性が強すぎるという懸念があった。ところが最近の有望な発見により、低分子のアイソザイム選択的阻害剤が、がん、神経変性疾患とその他の中枢神経系疾患の独特な治療法に用いる新規化合物となり、薬効範囲の広い抗ウイルス薬、抗菌薬となる可能性が示唆されている。

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