Review Article

タンパク質の分解誘導:新しい創薬パラダイム

Nature Reviews Drug Discovery 16, 2 doi: 10.1038/nrd.2016.211

従来の低分子創薬は、タンパク質の機能に直接影響を及ぼす結合部位の占有率に着目していたが、この方法では、低分子との結合に適した部位を持たないタンパク質を標的にできないのが通例である。さらにin vivoで標的の十分な阻害を維持するには薬物の高用量全身投与が必要な場合があり、これは望ましくないオフターゲット作用のリスクを高める。もう1つの創薬アプローチとしてタンパク質の分解誘導がある。これはイベント駆動型のアプローチで、標的タンパク質が薬物と結合すると、このタンパク質に「分解せよ」という目印が付く。細胞の品質管理機構を利用して標的タンパク質を選択的に分解するタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)を用いた新しい技術は、従来の低分子アプローチと比べて数々の利点があるため製薬業界で大きな注目を集めている。こうした利点としては、薬物の全身投与の削減、タンパク質機能の阻害を伴うことの多い標的タンパク質の発現増加に抑制する能力、そして、現在のところ治療標的となっていないタンパク質、例えば転写因子、足場タンパク質、調節タンパク質を標的とする潜在能力などがある。

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