Review Article

抗がん戦略としての酸化ストレスの調節

Nature Reviews Drug Discovery 12, 12 doi: 10.1038/nrd4002

酸化ストレスの調節は、腫瘍の発生、および抗がん剤による治療に対する応答のいずれにおいても重要な要因である。腫瘍発生と関連している多数のシグナル伝達経路もまた、直接的あるいは間接的な機構によって活性酸素種(ROS)の代謝調節能を持つ。一般にROSレベルが高いと、細胞にとっては有害である。しかし、通常、がん細胞の酸化還元状態は、正常細胞のそれとは異なる。がん細胞では、代謝およびシグナル伝達が異常なために、ROSレベルの上昇が認められる。このような状態は、がん細胞の抗酸化能の上昇によってバランスが保たれているという観察結果から、高いROSレベルは腫瘍形成を妨げる障壁となっている可能性が示唆される。ところが、ROSはDNAの変異および発がん促進性のシグナル伝達経路を誘導することで、腫瘍形成を促進することもある。これらの相反する作用は、ROSレベルを調節することを目的とした、将来的に有用と思われる抗がん戦略にとって重要な意味を持つ。本論文では、腫瘍の発生および抗がん治療に対する応答に関して論議の的となっているROSの役割について取り上げる。また、腫瘍細胞の抗酸化能を標的とすることで良好な治療効果が得られるという考えについて詳細に説明する。

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