Research Highlights

がんナノ医療:肝臓の免疫調節

Nature Nanotechnology 2019, 319 doi: 10.1038/s41565-019-0410-5

肝臓の特徴は、免疫抑制性の高い環境であることであり、そのため腫瘍や転移の進行に免疫療法を適用してもうまくいかない。肝臓類洞上皮細胞(LSEC)は肝臓の免疫調節に大きな役割を果たしているので、その活性を標的介入を通して調節することで、免疫療法の成功率が向上する可能性がある。こうした目的で、免疫調節特性と腫瘍細胞毒性を持つカチオン性ペプチドのαメリチンには、LSECを認識するシグネチャー配列があることが示されている。しかし、αメリチンを遊離型薬剤として投与すると、溶血が引き起こされる。

今回Yuたちは、αメリチンを自己集合させた脂質ナノ粒子は、副作用が少なく静脈注射でき、特異的にLSECに送達され、そこで肝臓の免疫状態を最終的に調節する分子過程の引き金を引くことを示している。

著者たちは、さまざまなin vivoモデルを使って、このナノ粒子を用いた治療が、肝臓機能を損なうことなく、マウスの生存期間を延長させ、腫瘍免疫記憶を誘導し、転移の数を減少させたことを示している。特に、自然肝転移モデルでは、対照群の生存率20%に対して、処置群ではマウスの80%が生存し、原発腫瘍切除後100日後も転移がなかった。

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