Research Highlights

化学的自己集合:ひずみによる非線形破壊

Nature Nanotechnology 2017, 1117 doi: 10.1038/nnano.2017.224

化学的構造体が自己集合して、複雑な分子の機能性を有する分子凝集体が作られる。こうした機能性は、生物系から着想を得ていることが多い。自己集合は精力的な研究の中心となっているが、こうした分子凝集体の分解は凝集体の機能性の時間的制御につながり得るにもかかわらず、ほとんど調べられていない。Fredyたちは今回、非線形的に分解し、天然の細管の分解ダイナミクスを模倣する人工超分子細管について報告している。

この系は、芳香族アームを2つ持つV字型分子からなり、光応答性のアゾベンゼン基も埋め込まれている。さらに、この分子は、親水性の置換基によって水溶性になっている。水中では、この分子が自己集合して、直径が約11 nmで長さが200 nmを超える細管が形成される。紫外光を照射すると、アゾベンゼン基が非平面状のシス型立体配置に切り替わり、細管に機械的ひずみが生じる。時がたつにつれて、まず凝集体が再組織化されて、構成要素が互いに対してずれたJ凝集体が形成され、次により小さな細管に分かれ、最終的に分解した。水とアセトニトリルの混合液では、構成要素が有機溶媒により溶けやすいため、単純な線形の分解が生じた。

こうした人工細管の水中での挙動は、ひずみエネルギーの初期の蓄積によって分解が生じる天然の細管の挙動とあまり異なっていない。

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