Research Highlights

生物学的ナノ構造体:不ぞろいが透明性を生む

Nature Nanotechnology 2015, 615 doi: 10.1038/nnano.2015.122

一部の昆虫は、例えばカモフラージュのために構造色を生み出したり透明になったりできるフォトニックナノ構造体を、体の一部に持っている。そうした昆虫の1種が、ガラスのように透明な羽を持つ蝶ツマジロスカシマダラ(Greta oto)である。その羽はほぼ透明で、反射率は可視スペクトル全域で視野角80°まで数%と低い。特定の昆虫の目や羽の反射防止性は、その表面にあるナノ構造体の規則的配列とサイズに起因する。カールスルーエ工科大学のH Hölscherたちは今回、ツマジロスカシマダラの羽の透明性の起源はそうしたことではなく、羽の表面に見られるナノピラーの不規則性と関連があることを明らかにしている。

Hölscherたちは、こうしたナノピラーが平均間隔120 nmで不規則に配列しており、その高さは400~600 nmの範囲で不ぞろいであることを見いだした。そして、ナノピラーの配列とサイズが不ぞろいであることが、この蝶の羽の全方向反射防止性を生み出していることを、ガウス分布のナノピラーの高さを含む解析モデルで光学特性をシミュレートして立証した。

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