Research Highlights

半導体デバイス:量子ドット温度計

Nature Nanotechnology 2014, 914 doi: 10.1038/nnano.2014.205

物体を熱浴に接触させると、最終的に物体の温度は安定して熱浴自体の温度になる。しかし、この法則には例外がある。例えば、半導体試料を1 K以下の温度の熱浴に沈めると、半導体内部の電子集団の温度は熱浴より高くなりうる。しかし、この温度はどうやって測るのだろうか。チューリッヒ工科大学(スイス)のM Kronerたちとルートヴィッヒ・マクシミリアン大学(ドイツ)のS BeavanとA Högeleたちは今回それぞれ独立で、単一の量子ドットを用いて、数百ミリケルビンのヘリウム浴の中にある電子だめの温度を測定できることを示している。

量子ドット内部の電子や正孔のエネルギーは、離散的な値しかとることができず、レーザービームを用いて、極めて正確な波長の光を吸収し放出する電子正孔複合体を作ることができる。この2つの研究グループは、量子ドット内の電子2つと正孔1つからなる負に帯電した励起子のスピン状態に対応する輝線を用いた。磁場中では、2つのスピン状態はゼーマン効果によって分裂し、それらの相対的な分布密度は温度に依存する。従って、光放射の比を測定することで、帯電した励起子の温度を確定できる。2つの研究グループは、量子ドットを電子だめの十分近くに配置できたので、電子だめの分布密度は帯電した励起子の状態の相対的な分布密度に反映された。どちらの場合も、電子だめの温度はヘリウム浴の温度より高いことが確認された。

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