Research Highlights

薬剤送達:ナノ粒子のヒッチハイク

Nature Nanotechnology 2013, 1213 doi: 10.1038/nnano.2013.281

脾臓と肝臓にある単核食細胞系によって異物が迅速に除去されるため、ナノ粒子がその潜在的な治療効果を発揮する能力が制限される。病原体が体の内部を移動する方法の1つは、赤血球を輸送媒体として利用することであり、細胞ヒッチハイキングと呼ばれている。赤血球利用の長所は、単核食細胞系による除去を自然に避けられることである。カリフォルニア大学サンタバーバラ校とペンシルベニア大学(いずれも米国)のS Mitragotriたちは今回、この戦略をナノ粒子に適用して、体組織内の集積と循環時間の両方を増大できることを示している。

Mitragotriたちは、ポリスチレンナノ粒子を赤血球とともに培養してマウスの尾静脈に注入し、自由なナノ粒子と比べて、このナノ粒子のふるまいが著しく変化することを観察した。肺において赤血球に吸着したナノ粒子の集積が7倍に増加することが見いだされた。これは、肺血管系の細い毛細管を通り抜ける際に、ナノ粒子が赤血球から離れることを示唆している。つまり、赤血球は機能を維持し体内を循環できるのである。さらに、赤血球に付着することで、脾臓や肝臓での集積も減少する。

Mitragotriたちは、肺の内皮細胞に付着できる抗体であるanti-ICAM-1でナノ粒子表面を修飾して、この方法を改良した。これにより、肺における赤血球に吸着したナノ粒子の滞留時間が10時間から24時間に延びた。

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