Brief Communication

統合失調症の遺伝的危険性と脳の機能

Nature Medicine 9, 12 doi: 10.1038/nn1795

統合失調症(精神分裂病)につながる遺伝子の変異が、精神病の兆候と認識力の欠損にかかわり、同時に脳の前頭葉と側頭葉の活動を減退させるという報告が、Nature Neuroscience12月号に掲載される。

 統合失調症の最も顕著な症状は妄想と幻覚であるが、症状が出そろう前に軽い精神異常の行動があり、全体的な認識不全もある。Jeremy Hallらは、統合失調症の親族をもつ若者たちを10年以上にわたって研究した。彼らは、統合失調症を発症する危険性が高いが、その中で発症する者と発症しない者の違いを調査したのである。それによると、ニューレグリン1(NRG1)遺伝子の変異体をもつ人は、変異体をもたない人よりも精神病の症状を起こしやすく、知能指数(IQ)も低い傾向がある。ニューレグリン1遺伝子は以前、統合失調症に関連するとされている。さらに、その危険なニューレグリン1変異体をもつ人は、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)で測定してみると、脳の前頭葉と側頭葉の活動が弱いことがわかった。

 この結果、統合失調症の行動や神経的な前兆には、遺伝要因が大きくかかわっているのではないかと思われる。脳の活動の減退が、遺伝的変動と認識の機能障害双方への影響とどう関連しているか、その因果関係を決定するにはさらに研究が必要である。

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