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外傷性脳損傷:外傷性脳損傷を負った退役軍人におけるマグネシウム–イボガイン療法

Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02705-w

外傷性脳損傷(TBI)は身体障害の主な原因の1つである。後遺症には機能障害や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ、不安などの精神症候群が含まれる。特殊作戦部隊(SOF)の退役軍人(SOV)では、これらの合併症のリスクが高い可能性があり、オネイロゲンであるイボガインのような、まだあまり調べられていない代替療法を試みる人もいる。イボガインは植物由来の化合物で、複数の神経伝達物質系と相互作用することが知られており、主に物質使用障害の治療薬として研究されている。また、イボガインは致死的な心不整脈の発生例と関連があるが、この懸念はマグネシウムとの併用で軽減できる可能性がある。今回我々は、主に軽度TBIのSOV男性30人において、補完的治療法と共に実施したMISTIC(マグネシウム–イボガイン療法:外傷性中枢神経系損傷のスタンフォード・プロトコル)についての前向き観察研究を報告する。世界保健機関(WHO)が開発した健康と障害について評価する標準ツールであるWHODAS(World Health Organization Disability Assessment Schedule)を用いて、ベースラインから治療直後の変化(主要評価項目)、およびベースラインから治療1カ月後の変化(副次評価項目)を評価した。追加の副次評価項目には、PTSD(DSM-5準拠PTSD臨床診断面接尺度〔CAPS-5〕)、うつ(モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度〔MADRS〕)、および不安(ハミルトン不安評価尺度〔HAM-A〕)の変化を含めた。MISTICは、機能については、治療直後(Pcorrected < 0.001、コーエンのd = 0.74)と、治療1カ月後(Pcorrected < 0.001、d = 2.20)の両方で有意な改善を示し、また、PTSD(Pcorrected < 0.001、d = 2.54)、うつ(Pcorrected < 0.001、d = 2.80)、不安(Pcorrected < 0.001、d = 2.13)については、治療1カ月後に有意な改善をもたらした。予期せぬ有害事象や重篤な有害事象は起こらなかった。これらの初となる非盲検の知見を検証するためには、安全性と有効性を評価する対照をおいた臨床試験が必要である。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04313712。

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