Editorial

ようやく進展が見られたRSウイルス感染対策

Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02571-6

RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)感染は、幼児や高齢者に重篤な下気道疾患を引き起こすことがあり、死に至る可能性もある。1960年代に不活化ワクチンにより乳幼児に高率でワクチン関連疾患が発生したことから慎重な態度がとられてきたが、高齢者向けのRSVワクチンと乳幼児向けのモノクローナル抗体が、ようやく開発・承認された。また、乳幼児を保護するための妊婦へのRSVワクチンの接種も推奨されると予想されている。最も有望視されているモノクローナル抗体は、早産児と健常児を対象とした試験では70%以上の予防効果が示されている。しかし、実施上の難問や法外な費用を考えると、特に低・中所得国では使用者が限定される可能性がある。5歳以下の小児のRSV関連死は全世界で10万人を超えると推定されていて、乳幼児および低・中所得国での死亡率と罹患率が高い。これらのワクチンやモノクローナル抗体の承認は公衆衛生にとって大きな前進であり、公平な配分と広く使用を促すための情報開示が、今後のRSV感染を大幅に減らすために世界と各国の保健機関に求められている。

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