Editorial

健康者の集団を作っていく

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02481-7

「すべての人に健康と福祉を」は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の1つだが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により不平等はさらに深刻化し、実現への道は遠のいた。この目標を危うくしているのはパンデミックの余波だけではなく、気候変動、健康格差と経済格差の拡大、政情不安などが挙げられ、さらにいつ起こってもおかしくない次のパンデミックも同じような影響を及ぼしている。今月号で我々は、全ての人々がもっと健康でいられる未来を作り出すには、何が必要なのか、つまり国連が提唱しているSDGsを実現するために必要な条件について広く問い掛けた。これらに対する専門家の意見や考察はWorld View、Commentsなどで述べられている。これまでにないほどの速さで進歩している人工知能やデジタル技術は、適正に用いられれば医療の未来を変える可能性があるといわれている。一方、世界保健機関(WHO)は疾病の治療だけでなく健康増進に重点を置き、保健システムの方向転換を呼び掛けている。健康な人々の集団を作り出すには行政だけでなくさまざまな領域の協力が必要と考えられる。革新的な健康研究、すなわち政策に情報を与え、実施とその成果を推進するような研究は、科学と臨床の専門分野をまたぎ、医療と非医療の領域を取り払い、国や大陸の境界を超えた協力なしには実現しない。我々は、従来の研究領域の境界を壊していく学際的研究が、世界の人々の健康を支えていく革新的な解決策をもたらして、2030年までに1人の取り残しもなくSDGsを達成できることを期待している。

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