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冠動脈疾患:多民族性の多遺伝子リスクスコアは冠動脈疾患のリスク予測を向上させる

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02429-x

冠動脈疾患(CAD)のリスクが最も高い人を、理想的には発症前に特定することは、いまだ公衆衛生上の重要なニーズである。CADにおける強い遺伝的要因の関与を反映し、これまでの研究においてCDCのリスク層別化を可能にするゲノムワイド多遺伝子スコア(genome-wide polygenic score:GPS)が開発されてきた。今回我々は、新たな高性能のCADの多遺伝子スコアを開発し、GPSMultと名付けた。このスコアには、5つの民族集団におけるCAD(症例26万9000例以上、対照117万8000例以上)と、10のCAD危険因子に対するゲノムワイド関連解析の結果が組み込まれている。GPSMultは、英国バイオバンクのヨーロッパ系の参加者においてCADの有病率と強く関連しており(標準偏差当たりのオッズ比2.14、95%信頼区間2.10~2.19、P < 0.001)、また、この集団の中間五分位群と比較して、3倍のCADリスクを有するのは集団の上位20%、逆にCADリスクが3分の1であるのが集団の下位13.9%に相当することが分かった。GPSMultは、CADの初発事象とも関連しており(標準偏差当たりのハザード比1.73、95%信頼区間1.70~1.76、P < 0.001)、健康な人の3%が、既にCADに罹患した人と同等の将来的なCADリスクを持つことが分かり、リスクの識別と再分類が大きく改善された。アフリカ系3万3096人、ヨーロッパ系12万4467人、ヒスパニック系1万6433人、南アジア系1万6874人の参加者を含む外部検証データセットでは、GPSMultは、全ての民族集団にわたって関連の強さを増すことが実証され、また、これまでに公開された全ての利用可能なCAD多遺伝子スコアより優れていた。これらのデータは、CADの新しいGPSMultをこの分野に提供し、さまざまな集団から得られたCADと関連形質の遺伝的関連解析データの大規模統合が、多遺伝子リスク予測をいかに有意義に改善し得るかについて、一般化可能な枠組みを示している。

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