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早発卵巣機能不全:早発卵巣機能不全の発症原因となる遺伝的バリアントの浸透率

Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02405-5

早発卵巣機能不全(POI)は女性の1%が罹患し、不妊症の主要な原因である。単一遺伝子疾患であるとしばしば考えられ、文献には、およそ100の遺伝子に生じた原因バリアントが記載されている。今回、これらの遺伝子バリアントの浸透率を、英国バイオバンクの女性10万4733人(このうち2231人〔1.14%〕が40歳未満で自然閉経)のエキソーム塩基配列データを用いて、体系的に評価しようとした。その結果、これまでに報告されていたどの常染色体優性(顕性)効果についても、これらを裏付けるような証拠は限られていることが分かった。また、これまでに報告されているPOI原因遺伝子のヘテロ接合性の効果のほぼ全てについて、全タンパク質短縮型バリアントの99.9%(1万3708のうちの1万3699)が、生殖機能の健全な女性に見られており、低い浸透率であることも除外された。一方、いくつかの遺伝子については、ハプロ不全効果の証拠を見つけた。例えば、TWNK(閉経が1.54年早まる、P = 1.59 × 10−6)や、SOHLH2(閉経が3.48年早まる、P = 1.03 × 10−4)である。まとめると、今回の結果は、大多数の女性のPOIを引き起こすのは、これまでに原因遺伝子とされてきた遺伝子の常染色体優性バリアントでもなければ、現在の臨床診断パネルで検査されている遺伝子の常染色体優性バリアントでもないことを示唆している。また、今回得られた知見は、以前の研究成果と合わせて、POI症例の大半ではおそらく、POIは複数遺伝子性あるいは多遺伝子性であることを示している。このことは、今後の臨床遺伝学研究や、POI罹患家族に対する遺伝カウンセリングにとって重要な意味を持つ。

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